胸キュン☆SF風味

ここのところ、結構な勢いで本を買ったり読んだりしてます。
なんか萌えっぽいのも結構あったり。
ラノベっぽくないラノベとか、ラノベだと思ってるけどラノベじゃないのとか。
「大人のためのラノベ」と自称している有川浩さんのデビュー作「塩の街」が文庫になっていたので、読んでみました。

塩の街 (角川文庫)

塩の街 (角川文庫)


で、最初の感想は「ヤバい!きゅんきゅん☆する!」でした。
これって電撃大賞だったんですね。もろラノベレーベルじゃないですか。電撃→文芸書→角川文庫との異例の遍歴をたどった小説でもあるとのこと。
十分大人の読書でイケるでしょ!ラノベにとどめておくのはもったいない。


宇宙から飛来した謎の「塩の塊」の影響で、地球人類がいきなり塩の柱になってしまう現象が多発している世界の日本が舞台。
最初の短編2編は、主人公のコンビ秋葉さんと真奈ちゃんとが、交通が遮断された街を行く男性二人と出会うストーリー。そのやり取りで、世界がどんな状況におかれているのかがわかります。
ほとんどゴーストシティと化した都心部。いきなり塩害が発症する人々。塩害によって道ばたで塩の塊になったまま、雨に溶けて行く最期。
その中で、支え合う「元自衛官エースパイロット」秋葉と普通の女子高生だった真奈の、ピュアラブストーリー。
「世界」と「恋人」を天秤にかける、ってプロットは昔から大好きです!
世界を救うために、一人F14で塩の柱に爆撃をかけようとする秋葉に真奈が放った言葉。

世界なんか救わないで!秋葉さんが無事でいて!もう旧い世界の方が良かったなんて言わないから!

真奈を守る自衛官武器担当・野坂さんの旦那さん(情報官)が、秋葉に頼まれて真奈ちゃんと奥さんに言った言葉。

俺、二尉の気持ちがわかるんだ。あの人、本当に君が好きなんだ。本当に守りたいんだ。俺もわかるんだ。だって」
「俺だって、お前を守るためならどんなずるいことでもする。お前にどんな恨まれても嫌われても、離婚されても慰謝料取られても、お前が無事ならいいんだ」

秋葉を爆撃に向かわせる、元同級生でどさくさまぎれに指令になっちゃった入江さんが真奈に言った言葉。

「君は重い荷物になるべきだ。置いていける、他人に預けていけるなんて思わせちゃいけない、残して死ねないと重圧を与えてなくちゃね」
「秋葉が作戦を成功させるとしても、彼は世界なんかを救ったんじゃない。君が先に死ぬのを見たくないってだけの、利己的な自分の感情を取ったんだ。〜中略〜僕らが救われるのはそのついでさ。君たちの恋は君たちを救う。僕らは君たちの濃いに乗っかって余録に預かるだけさ」

こうして台詞だけ抜き出すと、チープに感じられちゃうな。
このくっさい台詞がぜんぜん気にならないくらい、ぎりぎりの臨場感が繰り広げられるストーリー。
この入江さんの「悪辣」て言われるずるっこさが、いい感じに効いてるんだー。*1


続編(?)のあとがきでも書かれていますが、作者の作風として「一つだけ壮大な嘘設定を作って、それ以外は事実で固める」っていうのが、すごく生きていると思います。
塩の街」が陸自と空自。「空の中」が空自。「海の底」が海自。

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)


海の底 (角川文庫)

海の底 (角川文庫)


細かいところまでかっちり書かれているのがすごいです。続けて読んでみます。*2

*1:ラノベなら入江さんには美人秘書とかついてそうなんだけど、「その後」でもずっと一人なのが良い感じ

*2:いま、「海の底」読みちゅう