時間という距離

最近買った本にアタリが多くて嬉しい。

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)


時間パラドックスSF。
25世紀に地球外生命体(ET)によって、地球を放逐された地球人が、過去に戻ってETの侵略を阻止する。
過去に派遣されるのはオーヴィルをはじめとした、人形生命体メッセンジャー。
22世紀でETの侵略を阻止できなかったら、20世紀に、だめならもっと過去へと、メッセンジャーたちは時間を逆流していく。
過去でETとの戦いを繰り広げることで、歴史は書き換えられ、「オーヴィルが元いた時間」は存在しなくなり、帰れなくなる。
未来であるそこで出会った、心をかわした存在「さやか」の存在も、消えてしまう。
こう書いちゃうと味気ないけど、自分の好きな人と永遠い合えなくなるどころか、自分の存在と行為によって、自分の愛した人が存在しなくなるって、ものすごいプレッシャーだと思う。
彼女の言葉によって、自分の守るべき存在を近くしたオーヴィルにとっては、どれだけ悲しいことなのかな。
「忘れる」という機能を持たないメッセンジャーという存在だからこそ、戦いの中で出会っていく人々、卑弥呼・彌与たち古代人にも厳しく、対等に、愛しみを持って協力できたんじゃないかな。
めっちゃSFなんだけど、ガジェットに頼らないヒューマンドラマでもあった。
なんとなく、ワタシの中では夏向きの一冊でした。