冬の課題図書

久しぶりに、いろんな事を犠牲にしても読みたいと思う本でした。

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)


闇の守り人 (新潮文庫)

闇の守り人 (新潮文庫)


この作品って、最初は児童文学だったんですね。
わかりやすいけどくどくなく、癖のない文章はとても読みやすかったです。
文化人類学者でもあると言う作者の博識さが存分に発揮されていて、説明に頼らない機智に満ちた文章は、大人の鑑賞にも充分耐えられるレベルでした。というか、子供だけに独占させるのは、もったいない!


ベースになっているのは、異世界ファンタジーで、洋風でも和風でも中華風でもない。独自の世界観に基づいて世界と神話を構築している、その緻密さにも感動。
何よりも、ワタシがびっくりしたのは主人公の用心棒バルサが30過ぎの女性である事。
久しぶりに、自分と歳の近い主人公で感情移入がしやすかったです。(笑
幼い頃から養父に槍の使い方を仕込まれた短槍の使い手ではある物の、特殊な力をもっている訳でもなく、けがだらけで何度も死にそうになって、苦労して苦労した苦労人。憎しみも恨みももつし、理不尽な事には心底憤る。とっても人間臭い女性として描かれています。
「精霊の〜」で助ける事になった皇子チャグムは、へたしたら母子としてもおかしくない年齢差。6歳のときに父を凶刃に倒された己の姿と、チャグムの運命を重ね合わせ、半年以上の月日をかけて「用心棒」として以上の働きをしています。
「闇の〜」では、槍を修行中の少年ヨッサに養父ジグロから授けられた技を伝え、ジグロの親族にその技を伝えつつ、己の修業時代を振り返っています。
2作とも相手は少年ではあるけれど、成長期のバルサ自体とうまく重ね合わされ、30年と言うバルサの年齢を上手に表現し、その年月の重さを物語っているように思いました。


三人称でかかれた文体は、とてもわかりやすくてするすると頭に入ってきます。
重い運命を背負った人物が、複雑に交差して、最終的に一点にまとまって行くさまは、読書の醍醐味を感じました。久しぶりに電車の中で周囲の音を忘れるくらい熱中しました。*1


それにしてもひとつお願いしたいのは、バルサを「おばちゃん」と表現するのは…。
確かに30つたらおばちゃんなんだけどさ…。
年齢の変わらないワタシとしては…ねー…、微妙な物があるんですよ。

*1:電車を乗り過ごしました…。