母は恐ろし

エクサバイト

エクサバイト

コレも図書館で偶然セレクトした近未来(2025年)SF。
 記録と記憶に関する物語。

人間が自分の視界情報をすべて記憶に残せるようになった世界で、プロの見た視点で経験を共有するコンテンツをプロデュースする主人公・ナカジ。生まれたばかりの自分を放置してビデオジャーナリストという仕事を選択した母・クニコの死後残された「記録」を託されるところから混乱が始まる。

最初、ギミックの細かさから作者は男性だと思って単だけど検索してみたら女性でびっくりした。女性視点でみたら納得のいく仕掛けがいっぱいあったり、最後の大仕掛けは何となく想像ついたり。

いや、怖い。めっちゃこわい。クニコ怖い。
女性としての怖い部分、仕事をする女性としての怖い部分、全部詰まってるわ。
自分の姿形を変えても、名前とか存在を変えても、一個人として生き存在を残し続ける事。そのために、自分の一部を犠牲にする事をいとわない事。全部丸投げして、生還する事。
これ、女性じゃないと分かんない。男性には評価しきれないと思った。
SF部分は、ものすごくSFでソレもすごい。

意識と認識の物語にかんしては、この前の平野啓一郎のDAWNにも通じるものがあると思った。

ドーン (100周年書き下ろし)

ドーン (100周年書き下ろし)

 

日本語の美しさを再確認

ボーカロイドとか最近のJ-popの歌詞って、言いたい事を全部詰め込まなきゃ行けないみたいな、ガッツリ詰め込み感があるなーと思ってました。

情報過多で言葉ですべて包囲されてて世界観を強制してる。聞く人の感情が入り込む余地がなくて、逆に曲の世界観が狭くなってる。

本当に昔に(下手したら多分小学生の頃)に「音楽を聴いて初めて涙した」曲に再会して、本当にそう実感した。ずっと買おうかどうしようか迷ってて、amazonのカートに入れたまま放置していたCDに、超偶然でお借りできる機会に恵まれた。

20th Anniversary Album sora no uta

20th Anniversary Album sora no uta


新居昭乃さんの「sora no uta」。一番最後の曲「美しい星」がそれで、多分20年ぶりくらいに聞いて、やっぱり涙があふれた。

もう一つは、アンジェラ・アキさんの「Home」

Home (通常盤)

Home (通常盤)


NHKで作詞講座みたいな番組をやっていらして、 どこまで言葉を削りつつ、伝えたい事を音にのせるかを話していらしたのが印象的だった。
アンジェラ・アキさんは、紅白の舞台で周りがゴテゴテのドレスやら振り袖やら衣装装置の中 、いつもと同じTシャツとジーンズだったのも好印象すぎた。

英語に比べて、日本語は一つの音で伝えられる要素が少ない。「What you say」(あなたのことば)「What I say」(わたしのことば)みたいにもっと意味を込められるけど、日本語だと「ことば」という音しか伝わらない。そのかわり「ことば」という言葉に複数の意味を持たせたり、その裏にある隙間を想像させる余韻がある。

今日手にした2枚のCDは限られた音の中で、聞く人のイメージを聞く人自身にゆだねて、より広がりが大きくなるというよい実例だったと思う。 

京都の恋の物語

これで、一旦終わりらしい。

路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)

路地恋花(4) <完> (アフタヌーンKC)

小さな町家が続く、ものつくりの人たちが暮らす路地で繰り広げられる人間模様。

男性キャラでは一番お気に入りの花屋・一松の失恋ww 美人なレズビアン検事の片思いを応援してあげるの。カワイイ!
一番最初から、合間合間に登場していた手製本作歌・小春ちゃんの出発。意地悪いいじめっ子(元音楽家)十和田さんとのやり取りがかわいい。

麻生みことさんの、シンンプルでさらっとした人物のスタイルが好きです。ファッションも今風で、会話のテンポもいい。等身大の日常がふんわりと柔らかに綴られている。
無駄な力の抜けた、作り込まれていないようで、しっかりとその場面が想像できる。 

路地恋花みたいな「場」を繋がりにした短編連作って好きなんですよ。最近読んだのだと、有川浩さんの「阪急電車

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

路地恋花も、映画化しないかなー。あー、キャストまで頭に浮かびそうw

おおかみこどもとおとぎなばなし

おおかみこどもの雨と雪

http://www.ookamikodomo.jp/index.html

結構早い日程で見てきたんですけど、消化に時間がかかる映画ですよね。
見てる最中は突っ込みも入れず、映像と音楽に酔いしれて、ほろりと涙したりしてました。 

他の方がさんざん書かれているようなまじめな考察はできませんので、個人的に気になったところをチョコちょこっと。

  • 遺影代わりに使われていたおおかみおとこの免許証。生年月日のところ…。リアルにぐはぁ…ってなる。
  • 雪が生まれてきた時におおかみおとこはどこからあの雉狩ってきたんだろう? 大学都内と考えて、奥多摩の山の方かそれとも上野公園?(本郷のあの大学なら上野公園だよな)
  • まず、あのおおかみの巨体で都内かけまくって通報されなかったんだろうか?あの感じだとけっこうちょくちょくやってる気がする。
  • 雨が生まれた後、狩りにいって帰り道で銃殺(だよね、あれ)されるって、どんだけおおかみおとこ迂闊なんだよ。自分が目立ちやすいってことくらいわかってるよね、長いこと東京のど真ん中で生きてるんだから。
  • 猟友会みたいな人たちが動いてたのか、保健所が動いたのか。どっちにしても、そこそこ噂になってたんだろうなー。
  • 子供二人そろって4〜5年生きられるって、それもほぼ引きこもって、おおかみおとこかなり溜め込んでたんでしょうねー。
  • 予防接種の記録が無いとか、民生委員の人に突っ込まれてたけど、それって田舎に行ったから無視できるものでもないでしょ?
  • それ以前に、出生届出してる??おおかみおとこは親戚のところにいたし免許持ってたくらいだから、戸籍の登録はされてるよね。
  • 田舎に引っ越してからの成長は、まぁ普通に良いんじゃないでしょうか。(前提がぐすぐすなので、ファンタジーだと割り切ることにした)
  • 感動のラストシーン。雨に対して必死なのはわかるけど、雪のこと放っておき過ぎだと思った。雪はものすごく傷ついてたとおもう。

最終的に、「雪の語る物語」になっているところで、花と雪は和解してるんだろうけど、うーーーーーーーん。人間関係と社会環境との解釈?フェミニズムとか教育論持ち出すより先に、突っ込みどころ多く感じました。

まぁ、「おとぎばなし」なんで問題ないんだと思います。

画一的理想少女

最初に読んだのは去年だったけれども、今年の夏休みの課題図書に選んだ。

スワロウテイル人工少女販売処

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)

なんちゅーか、もう「男の夢満載」ですよね。
この作品がラノベに入らないのは、マルドゥック・スクランブルがラノベに分類されないのに近いからなのかなーと、ゲスの勘繰り。
人工知能が反乱を起こして機械に頼れなくなった人類が生み出した、ナノマシンから成る生命体「人工妖精」。「種のアポトーシス」という生殖行為によって感染する病気により、男女が隔絶した空中都市。
人工妖精であり自浄機関として動く揚羽をコアにして動くストーリーは、装飾過多でスピード感があって、色鮮やかで爽快だ。

けれどもね!
男性の理想の姿で生まれてきて、望みのままに奉仕してくれる人工妖精ってどこのエロゲの設定ですかーーー?? メスを武器に、戸惑いながら戦うヒロイン/揚羽も、読んでいる時はけなげでかわいいけれども、ふと我に返ったらちょうご都合キャラ。
人工妖精の開発者であり、本人も種のアポトーシスの影響で幼児退化しているという科学者/鏡子。キャラは良かったけれども、そこで幼女設定ですか。母性とのギャップ萌えですか…。

歯車の反対側では、人間の女性だけが男性型の人工妖精と暮らす世界があるということを考えたら、違和感のバランスがとるんでしょう。多分続編でその辺りがフォローされていると期待したい。
だから、次も読みますよ。

あ、面白かったです。聞かれたら、絶賛おすすめするくらいに面白かったです。

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)

スワロウテイル/幼形成熟の終わり (ハヤカワ文庫JA)

 

初めての平野啓一郎

「日蝕」が初めて文学賞をとった頃から、読まなくちゃいけない作家さんだと思いつつ、どうにも手が伸びなかった。
別に難しい話が苦手だからとか、漢字が読めないとかそんなんじゃないし。もっと小難しい話を読むこともある。しいて言うなら、コンプレックスだったのかもしれない。なんに対してかもわかんないような。

平野啓一郎を読むなら何からがいいか?」と聞いた時に、某文学少女がおすすめしてくれたのがDAWN。

 

ドーン (100周年書き下ろし)

ドーン (100周年書き下ろし)

21世紀半ば、東京大震災をくぐり抜けNASAの宇宙飛行士として火星往還ミッションをこなした明日人。2年半のミッションの間に起こった不可解な事件と地球に帰ってきた明日人に投げられる避難。
並行して、大統領選をめぐる軍事産業カンパニーの駆け引き。
最初は火星往還というSFを中心にしたミステリーなのかと思ったけれど、それ以上に政治色のほうが強くて、頭の中「??」になってしまった。 

ポイントなのは顔認証システムによる個人追跡「divisual」と、個人の中にある他社と対面するための外的人格「dividual」という対立構造だった。
「divid」 とは『誰かと対する時、その対峙者のための人格になる』という、ペルソナとはまた違った自分自信と分離しがたい自分の中の一面ということなのだろうか?一方で「visual」に接頭詞「in=否定する」がついたシステムによって、すべての監視カメラから個人の行動履歴を追跡可能にしている。

もっと考えれば真面目な書評になるのだろうけど、あえてそこまでするつもりはないw
自分というもののあり方を拡散してその中心を見極める試行錯誤をしていているように感じられた。

すくなくとも、ワタシは他の作品も呼んでみるべきだと思った。 

日蝕 (新潮文庫)

日蝕 (新潮文庫)

空の守人

ROMES06シリーズが面白かったので、2と3をまとめて読了。

ROMES06 誘惑の女神

ROMES06 誘惑の女神

ROMES06 まどろみの月桃

ROMES06 まどろみの月桃

1は空港自体&緊急輸送機を対象にしたテロリストに対抗するストーリーだった。
2は国際的テロリストの名をかかった宝石強盗とROMESシステムを作ったヒンデル保険会社がメイン。3はチベット解放を目的とした密輸と中国政府に対するテロリスト+麻薬密輸。

冊数を重ねるごとにどんどんトラブルの規模が大きくなっているのは作者が書き慣れていくからでしょうか?

どの作品にも魅力的なおっさんキャラが出てくるのが、個人的にツボ。
関空大好きなワタシには、宝石をちりばめたような夜景が目に浮かんでくる。 

早く4作目が読みたいー!